産業廃棄物収集運搬業・処分業を営んでいると、
「これは廃棄物ではなくて再利用できるのでは?」
「中古品として買い取ってほしいと頼まれた」
といった場面に出会うことがあります。
このようなときに関わってくるのが「古物営業法」です。
場合によっては、古物商許可を取らずに中古品の売買を行うと違法 になるケースもあります。
本記事では、
- そもそも古物商許可とは何か
- 産業廃棄物業と古物営業法がどう関わるのか
- 産廃業者が古物商許可を取っておくメリット・デメリット
- 取得までの大まかな流れと注意点
を、できるだけ分かりやすく解説します。
古物商許可とは?簡単におさらい
古物営業法が対象とする「古物」とは
古物営業法でいう「古物」とは、ざっくり言うと
「一度消費者や事業者の手に渡った中古品・新古品で、再び取引の対象となるもの」
を指します。具体的には、以下のようなものが例に挙げられます。
- オフィス家具(机、椅子、ロッカーなど)
- 事務機器(パソコン、コピー機、プリンターなど)
- 工具・機械類
- 店舗什器、看板
- 金属スクラップの一部 など
ポイントは、「一度誰かの所有物になったものを、再度売買の対象とする」 という点です。
古物商許可が必要になる行為
古物商許可が必要なのは、
- 古物を「買い取る」
- 預かった古物を「販売する(委託販売)」
- 解体等によって得られた部品・素材を販売する(一定の場合)
といった、反復継続して利益を得る目的で行う取引 です。
一回限りの譲渡や、廃棄物として処理するだけであれば、
通常は古物商許可の対象にはなりません。
産業廃棄物業と古物営業が交わる場面
1. 「これは廃棄ではなく、まだ使えるから売ってほしい」と言われるケース
産業廃棄物収集運搬の現場では、
排出事業者から次のような相談を受けることがあります。
- 「このオフィス家具、まだ使えるから買い取ってほしい」
- 「PCやコピー機を廃棄ではなく、中古として売れないか」
- 「機械設備を入れ替えるので、旧設備を売却したい」
このときに、廃棄物としてではなく「中古品」として扱う のであれば、
古物営業法の対象となり得ます。
2. 自社で回収した物品を再販するケース
産廃業者が、
- 回収した物品の中からまだ使用可能なものを選別し、
- 自社で整備して、
- 中古品として販売する
といったビジネスモデルを検討する場合、
これはまさに古物営業に該当します。
この場合、古物商許可なしで販売すると無許可営業 となる可能性があります。
3. スクラップ金属・部品販売との関係
金属スクラップや解体後の部品販売についても、
「一度使用されたものを再度売る」 場合には、古物営業法が関わってくることがあります。
- 「産業廃棄物として処理した結果としてのスクラップ売却」なのか
- 「中古素材として反復継続して販売する古物営業」なのか
法律上の位置付けが変わるため、判断には注意が必要です。
なぜ産業廃棄物業者は古物商許可を取っておいた方がいいのか
理由1:違法リスクを避けるため
一番の理由は、知らないうちに古物営業法違反になってしまうリスクを避けるため です。
- お客様から「中古で売って」と頼まれた
- 回収した物品をついでに販売した
といった「ついで」のつもりでも、
反復継続して行えば古物営業に当たる可能性があります。
古物商許可を取得しておけば、
- 中古品の取扱いを「許可を持つ事業」として正面から行える
- 万が一の指摘に対しても「許可済み」と説明できる
といった形で、コンプライアンス上の安心感 が大きくなります。
理由2:お客様からの相談に柔軟に対応できる
許可がない場合、
お客様から中古品売却の相談を受けても、次のような制約があります。
- 本来なら中古販売で価値が出るものでも、「廃棄物」としてしか扱えない
- 「買い取ってほしい」「仲介してほしい」というニーズに応えられない
- 結果としてお客様にとって最適ではない提案しかできない
古物商許可を持っていれば、
- 「廃棄」と「中古販売」の両方の選択肢を提示できる
- お客様にとって経済的メリットの大きい提案が可能になる
- ワンストップで処分・売却まで任せてもらえる
といった形で、サービスの幅が広がり、顧客満足度の向上につながります。
理由3:新たな収益源を作りやすい
古物商許可を取得すると、
- 中古オフィス家具・事務機器の販売
- 中古工具・機械の販売
- 解体後の部品・素材の販売
- ECサイトやフリマアプリを利用した販売(ルールを守った上で)
など、産業廃棄物業と親和性の高い新規事業 に取り組みやすくなります。
同じ現場・同じ顧客層の中で、
- 「廃棄物として受け取る」だけでなく
- 「価値ある中古品として再流通させる」
という二つの収益チャネルを持てるため、
ビジネスの安定性向上にもつながります。
理由4:環境配慮・SDGsの観点からもプラス
近年、企業には
- 廃棄物の削減
- リサイクル・リユースの推進
- SDGsへの取り組み
が強く求められています。
古物商許可を持ち、中古品としての再利用ルートを提供できれば、
- 「廃棄物量の削減」
- 「資源の有効活用」
に貢献でき、環境配慮型の産廃業者 としてのブランドにもプラスになります。
古物商許可を取得する際の基本的な流れ
※詳細は都道府県や警察署で異なる部分もあるため、あくまで一般的な流れとしてお考えください。
1. 管轄の警察署(生活安全課など)で事前相談
まずは、営業所を管轄する警察署に
- 自社の事業内容
- 取り扱う予定の品目
- 産業廃棄物業との関係
を説明し、古物商許可が必要かどうか、必要な場合の区分や注意点 を確認します。
2. 必要書類の準備
一般的には、以下のような書類が求められます。
- 古物商許可申請書
- 略歴書
- 住民票
- 誓約書
- 役員の一覧・法人登記簿謄本(法人の場合)
- 営業所の賃貸契約書や使用承諾書
- 事務所の見取り図・周辺図 など
産業廃棄物許可の内容と、古物営業の実態が矛盾しないように整理しておくとスムーズです。
3. 申請手数料の納付と申請
都道府県ごとに多少差はありますが、
おおむね 19,000円前後 の申請手数料が必要です。
書類とともに窓口に提出し、受理されると審査が始まります。
4. 審査・許可
通常、40日程度 を目安に審査が行われ、
問題がなければ「古物商許可証」が交付されます。
許可がおりたら、
- 営業所への標識掲示
- 帳簿(古物台帳)の備え付け
- 本人確認義務の遵守
など、古物営業法上の義務を果たしながら営業することになります。
取得前に押さえておきたい注意点
産廃許可との関係を整理しておく
- どこまでを「産業廃棄物処理」とし、
- どこからを「古物営業」とするのか
という 線引き を、社内で明確にしておくことが大切です。
あいまいなままだと、
- マニフェストの記載内容と実態がずれる
- 顧客への説明が不十分になる
- 行政からの指導の際に説明に困る
といったリスクにつながります。
管理体制(帳簿・本人確認など)を整える
古物商許可を取ると、
- 古物台帳への記録
- 取引相手の本人確認(一定金額以上など)
- 防犯上の配慮
といった義務が生じます。
産業廃棄物の管理とあわせて、
実務上無理のない運用体制 を事前に設計しておくと安心です。
まとめ:産廃業と古物商許可は相性が良い
産業廃棄物業を営む中で、中古品・再利用可能な物品に接する機会は少なくありません。
- 知らないうちに古物営業法違反となるリスクを避ける
- お客様からの「売却したい」「再利用したい」というニーズに応える
- 中古販売などの新たな収益源を確保する
- 環境配慮・SDGsの観点からも付加価値を高める
といった観点から、産廃業者こそ古物商許可を取得しておくメリットは大きい といえます。
自社のビジネスモデルや顧客ニーズを踏まえつつ、
古物商許可の取得を一度検討してみてはいかがでしょうか。

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